初めての和の世界
齢35にして初めて足を踏み入れた着物の世界。コンビニとファーストフードとメイド・イン・チャイナに慣れ親しんで生きてきた私にとって、着物は自国の文化でありながら、カルチャー・ショックと呼んでもいいような驚きの連続でした。ちょっと書き出してみます。
半襟を針と糸で付けなくてはならない
第一回目のお稽古が、半襟付けでした。半襟とは、長襦袢のえりの部分につける細長い布のこと。色、柄ともにさまざまで、長襦袢自体によごれがつかないようカバーする役割と、おしゃれをかねています。その半襟をいちいち、針と糸で長襦袢に縫い付けるのです。
十年ぶりくらいに針と糸を持って、手を針で刺しながら思いました。信じられへん。こんなに非効率的なことがあるやろうか。チャックにするとか、マジックテープで着脱式にするとか、なんぼでもやりようあるやろうに。これは洋服に勝たれへんわ。こら着物、廃れて当然やなあ。正直、そう思いました。
最終的には、50センチほどの長さを、1時間半かかって縫い付けました。明らかに時間かかりすぎです。そうやってやっとつけた半襟ですが、洗濯するときは、いったん糸をほどいて取り外します。洗濯が終わったら、また針と糸で付け直すのです。
はあ。信じられへん。
その後、かぶせるだけでOKの縫い付け不要のタイプの半襟や、アイロンでつけられるタイプもあることを知りました。やはり私と同じように、信じられへんと思う着物好きが、山のようにいるようです。
また、応急処置的ではありますが、安全ピンでつけたり、両面テープでつけたりという手もあることを知りました。それからなんとなく気が楽になって、そう半襟つけを負担に思うことはなくなりました。
ただ、着物が好きになってくるにつれ、不思議なことにこの半襟付けも苦痛でなくなってきています。いつも悪態をつきつつ、そこそこ楽しくやっています。
着物、帯にそれぞれ「格」がある。
正直、これがなかなか難儀です。着物は楽しいけど、楽しいだけでは済まないんだなあ。何度ため息をついたことでしょう。

一番左が最も「格上」。右に行くにつれ、格が下がります。左から袋帯、名古屋帯、正絹半幅帯、綿半幅帯。
ちなみに、「右」と「左」では、「左」が格上です。知らんがな、と言いたくなります。
和柄と格については、「知る」で詳しく書きました。
着物と長襦袢の仕立てが良い
うちの長襦袢も着物も、30年も40年も前に仕立てたものです。今のように、衣紋が抜ける形に仕立てられていません。衣紋を抜くためには、腰のあたりを握って、ぎゅうぎゅう下にむけてひっぱらなくてはならないのです。1980円の洋服になれている私は、いつ破れるかとひやひやでした。
でも着物も長襦袢も、破れる気配はありません。古さのせいで多少弱っているはずのことを考えると、本当にすごいです。きちんとした布と、きちんと縫製。使い捨てじゃない服ってこんななんだと思いました。これは感動でした。
小道具が多く、荷物が重い
お稽古に行くのはいつも楽しみでしたが、荷物の多さと重さにだけは閉口していました。お稽古の日の翌日は、腕が軽く筋肉痛でした。
ある日、ふと思いついて、着付けに要るものを数えてみました。着物と帯、足袋、肌着、すそよけ、長襦袢、腰紐、伊達締め、洗濯ばさみ……。全部で18項目、23個。
これをいつものように着物用バッグに詰め込んで、ついでに重さを計ってみたら……なんと4.2キロ! うちにあるダンベル2個分です。そら筋肉痛にもなるはずです。民族衣装なめたらあかんと思いました。
見過ごしていたような和柄のひとつひとつに、名前がある。
身近なものについていた和柄。左から、糸巻き柄のあぶらとり紙、匹田文(ひったもん)のカエル、青海波(せいがいは)のコースター。

