師匠と出会う

 友人に話を聞き、ネットで情報収集もした結果、無料の着付け教室は見送ることにしました。変に得をしようとせず、お稽古にふさわしいお礼をお支払いするという方法が、一番シンプルで安全に思えたからです。

  それにお金を払ったほうが、お稽古にも身が入るはずだとも思いました。関西人は、もったいないに弱いですから。

 隣町に自宅で着付け教室を開いている先生がいるとわかり、連絡をとりました。インターネットで見つけたのですが、ホームページもシンプルながらあたたかく、お人柄が伝わってくるようでした。

  先生のお宅にお邪魔してみると、ちょうど母と同じ年頃の女性が、着物姿でにこやかに出迎えてくださいました。それがY先生でした。この出会いの日から今日まで、私の着物人生の羅針盤となってくださっている方です。

  笑顔が明く、色白で、さすがに着物のよく似合うこと似合うこと……。全身から穏やかで優しい雰囲気が伝わってきます。

こちらの希望をはっきりと伝えた

 それでも私は警戒を緩めず、半ば押しが強すぎると思えるくらい、こちらの希望をはっきりと伝えることを心がけました。

「ともかく、家にある着物を着たいんです」
「手持ちの着物をひとりで着られるようになれば、それでいいと思っています」
「資格をとることは考えていません」

 Y先生は穏やかにほほえんで聞いておられました。そして、「よくわかりました。それではそのようにしましょう」と、全面的に私の言葉を受け入れてくださいました。

 早速、翌週からお稽古を始めることになりました。週一回2時間で、月謝5000円。マンツーマンです。2回目のお稽古の時に、初心者コースのカリキュラム12回分、1万5000円を前払いしました。

 こんな疑心暗鬼丸出しのスタートではありましたが、お稽古に通うごとに、ああ、この先生で本当によかったと思うことになりました。

  12回のカリキュラムには、半襟つけやゆかたの着付けといった初歩的なことから、留袖の着付けと袋帯の結び方という難易度の高いものまで含まれていて、一回一回しっかりと教えてくださいました。また、着物にとどまらず、さまざまな和の知識にも造詣が深く、いつも興味深いお話を聞かせてもらいました。

 何より、先生が伝統や習慣にがんじがらめになることなく、着物を楽しむ心を持っておられるところに、私は最も敬愛を寄せています。決まりごとを守ることと、着物を楽しむことは、矛盾せず両立することを、先生が身を持って教えてくださってる気がします。

着付け教室選びのポイント

 着付け教室選びのポイントは、カリキュラムや料金も大切ですが、一番はやはり、先生のお人柄だと思います。

  教室選びは、電話だけで申し込んだりせずに、先生に実際にお会いしてみてから決めるほうがいいでしょう。私は幸い一人目の先生がすばらしいかたでしたが、お話をして、腑に落ちないところがあれば、妥協せずに別の先生をあたってみるべきだと思います。

  「強い心」はここでも不可欠です。