着物の整理B調整する-その2
三、しみ
何年も虫干しすることなく、たんすに入れっぱなしだったせいで、多くの着物や長襦袢が湿気にやられ、黄色いしみがついていました。また帯も、恐らく食べこぼしかなにかで、しみになっているものが多くありました。
このしみについて、母は例の呉服屋さんに、私は着付けのY先生に相談したのですが、口を揃えてもう取れないと言われてしまいました。そのため、問題はしみをどうとるかではなく、しみがあるものをどう使うかになりました。
長襦袢でしみがついたものは、お稽古用にしました。ちょっとみっともないですが、絹の風合いは変わらず、十分に使用に耐えました。他に何人も生徒さんのいる教室だったら恥ずかしくてできなかったでしょうが、私の場合は先生とマンツーマンで、先生もおおらかな方だったので助かりました。
帯はリサイクルしました。生地がしっかりしているので、バッグにするとなかなか良いものになります。また、柄がきれいなものは、適当な大きさに切ってテーブルセンターやタペストリーにもしました。「作る」でいくつか紹介しましたので、よかったらそちらものぞいてみてください。
着物で、表より裏側の胴裏(どううら)や八掛(はっかけ)のしみが気になるものは、呉服屋さんに出して新しいものに変えてもらいました。これだけで着物全体の雰囲気がずいぶん明るくなりました。

写真↑は八掛を変えた紬。変える前の写真がないのが残念なのですが、見違えるようにきれいになりました。ちなみに、母のセンスに任せると、なんでも真っ赤になります。表地にもかなりしみがあるのですが、色が幸いして目立ちません。
着物の表にしみがついているものは、色の濃いものはそれほど気にならなかったので、そのまま着ることにしました。
ただ、夏用の白の小千谷縮のしみは、致命的でした。地が白いだけに黄色いしみが目立ち、特に足元はひどいものでした。
母が何とかしみ抜きなどできないかと上述の呉服屋さんに見せたところ、「こうなってしまっては無理ですよ」と、冷たく言われたとのこと。
呉服屋さんも着物を愛するがゆえに、着物をこんなふうにしてしまったことに、憤りがあったのかもしれません。それにしても、母はその口調に少なからず傷ついたようでした。
そこで、私が同じ着物を、Y先生に見せたところ、やはり、このしみはもう抜けないとのことでした。でも、「しみが目立たない色に、全面的に染め替えすることはできますよ」
と一案を出してくださいました。
「ただ、そうすると、もとの柄も消えてしまうけどね」
「はあ。柄が気に入って、どうにか着られないかと思っていたので、それはちょっと……」
「それやったら、もうこれはこのまま置いといたほうがええやろね」
あーあ、これはもう、着物として着るのはあきらめなさいっていう意味やな。勝手にそう取ってがっかりしていると、
「足元のあんまり見えへん、夜のおでかけに着ていったら」
と先生。腰が抜けるほど笑いました。
帰宅して母にY先生の言葉を伝えると、母も脱力したように笑っていました。
着物のしみを見ると、手入れ不足の罪悪感もあり、落ち込むものですが、ほんとにものは言いよう考えようだと思います。着物のためにも、「ダメだ」なんて否定をなるべくしないでいたいと思います。
根性なしの私はあまり夏に着物を着ないので、残念ながらY先生のご提案は実行しないままですが、夏になるとよく窓辺にかけて眺めています。光で涼しげに透けて、とてもきれいです。あきらめがついたら、のれんにしようと思っています。

写真は窓辺にかけた小千谷縮。一度は着ようと思っています。夜のお出かけに。
